セキヨウに想う
「でね!今度のこの大きい猫がさぁ!」
夢物語なんて言う人は夢を追わない人。
僕がいえた話ではないが、そう思い僕はいつも嬉しそうな話を楽しく聞いていた。
だけれど、
役を貰い舞台に立つように稽古に忙しくとなると、毎日の日記は白紙が多くなっていく。
それは望んでいた僕の夢だから。
そうは思っても、自分の世界と彼女の世界、よくわからない境界線のような物を僕は勝手に引いていった。
「どうして?私、何か変わった?私は……私だよ?」
勝手に線引きした僕に、私は変わっていないと何度も言われた。
分かってる。
臆病な僕の心の杭は誰打つ事無く、僕自身が僕の中の彼女を変えたことを。
「どうして……。」
「……ごめん。」
それでも、時折届く舞台のポスターや写真は嬉しさと共に距離を感じさせていった。
神様へのお願いを僕は勝手に変えていた、ただ彼女の成功だけと。
そして、すれ違うまま時間は進み、僕は大学生になった。