金木犀




それから、仕事は急に忙しくなる。



1年かけて作ったシステムが最終段階に入って、プロジェクトで一番大きな機能を任されてた俺は、残業、徹夜続きで。



自分が責任を負って、何か作るってのが初めてで、何か問題が起きたときいつでも対応できるように、ほとんど会社に居るという生活を続けた。




仕事場はでっかいビルで、親切に食堂から売店からATM、仮眠室まで用意されてる。






ここで生活できんじゃん・・・って思うぐらい。




近くにはスーパー銭湯まであるし・・・







そんな生活が3週間続いた。







「慶太。」



会社に泊まって、目覚めてすぐ喫煙室でタバコを吸ってるとトヨさんが入ってきた。




「あ、おはよーっす。」



「また泊まったのか?」



トヨさんはグレーのストライプの細身のスーツ。



お洒落なんだよなー。



「はい、昨日の夜からトラブルあって・・・」



頭をボリボリかきながら答える。



この爽やかなトヨさんとは大違いだな、今の俺・・・



「無茶すんなよ。二日ぶっ通しだろ?」



「大丈夫、俺、頑丈ですから」



笑顔で答える



「バカ、体力に過信しすぎると後で痛い目みるっつの。気をつけろ」



「はーい」



トヨさんはマジで面倒見がいい。



だからトヨさん慕ってる後輩がいっぱいいるんだよな。





「今日の進捗会議、俺出てやるから仮眠とっとけ。あと、奈緒が来いって今日。晩飯作って待ってるってよ。」




「マジっすか?やったー、奈緒さんの料理、マジ美味いっすよねー。」



無邪気に喜んでいると




「それよりお前、奈々になんかした?」



俺の側により小さな低い声で言うトヨさん。



その声には、恐怖を覚えるような、寒気を感じた。







< 22 / 51 >

この作品をシェア

pagetop