金木犀



「今日旦那さんは?晩ご飯つくらなくて大丈夫なんですか?」



「加地君古風だね。今どき晩ご飯も作れない旦那は誰も貰ってくれませんよ?」



性格は、超頼りになる姉御肌。



佐藤さん以外は俺の会社の新人なんだけど。



新入社員なんて男のくせに佐藤さんを崇拝してる。




8時をすぎると、ピリピリしてる事務所も和やかな雰囲気になる。


こんな時間が好きで、夢中で仕様書広げて、佐藤さんと討論を繰り返す。




まだ入社3年目の俺だけじゃ心配だからって佐藤さんを手配してくれたのはトヨさんで。




今までの仕事で一番楽しいかもしれない。




残業したって、寝不足だって、全然ストレスにならない時間が続いた。

































「ううーーー」



机に俯せて、声にならない声を小さく続ける。



「奈々が壊れてる」



少し遠くで由花の声がする。




「何?いつものことじゃん」



クラスメイトの海斗が笑いながら続ける。




「ほっとこほっとこ」



そう言って、由花と海斗は教室を出ようとする。




「うわぁーんっ」



構って欲しい私は大きな声で泣き真似をした。


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