聖なる告白
「まさか。そんな偶然、あるわけないよ。日帰りの海水浴客かもしれないし」

「いやー、あり得るって。旅先で理想の男性と出会うなんて運命的じゃん。期待しちゃいなよ」

「き、期待って……」


確かに私は、旅先での出会いに期待した。でも、そんなのは小説やドラマに出てくる都合の良い展開だと、実は知っている。

新たな恋を、切実に求めてはいるけれど――現実は厳しいのだ。


「……そうだね、会えるといいんだけど。さっ、そろそろ宿にチェックインしようよ。久しぶりにダイビングして疲れたー。早くお風呂に入って、ごろごろしたい」

「あ、ちょっと待ってよ、優美。私まだ焼きそば食べてないし」

「ええっ、まだ食べてなかったの?」


夏の太陽がまぶしすぎて、つらい。

悲観的な心を隠し、私は明るく振舞うのだった。
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