触れられないけど、いいですか?
霜月さん達が玄関を出て行くと、その場には私と父の二人が、取り残されたかのように立ち並ぶ。


「さくら」


少しの間の沈黙を、父が私の名前を呼ぶことで破る。


「わ、分かってる」


父の言いたいことは分かっているつもりだーー霜月グループとの縁談が、朝宮家にとってどれだけ良いものかを。
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