私達の世界はタイトル未定。



「そういうこと、言わないで」

「……でも」

「俺に気を使わないでほしい。鳰さんはつまらない人間じゃないですよ」

 じっと見ているとやがて目が合い、鳰さんは眉を下げてゆっくり頷いた。

「な、何かごめんなさい」

「謝らないで下さいよ」

 鳰さんは今日も俺の前で、大きな笑顔を見せてはくれなかった。

 でも、また少し鳰さんのことを知れた気がして、俺は嬉しかった。

 もう一度、無意味に鳰さんの頭にポンポン手を乗せると、俺達はアパートに帰るためにバスに乗った。


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