私達の世界はタイトル未定。
第五章 『キスが落ちる』
~鳰都~
「も……しもし」
『この間はごめんね』
電話口にて、開口一番に謝られた。
「……も、もういいよ」
『都ちゃんに嫌われたくないんだ』
六月もそろそろ中旬、私は明日の仕事のために早めにベッドで休もうとした所で、一本
の電話がかかってきた。
『都ちゃんのこと、俺本気で振り向かせたい』
「……も、守屋君」
『この間のことは忘れてほしい……って、それは虫が良すぎるだろうけど、自分の考え改めたよ』
電話の主の守屋君の声は重く、彼の後ろで雨がシトシト降る音が聞こえてきた。