私達の世界はタイトル未定。
第五章 『キスが落ちる』




~鳰都~

「も……しもし」

『この間はごめんね』

 電話口にて、開口一番に謝られた。

「……も、もういいよ」

『都ちゃんに嫌われたくないんだ』

 六月もそろそろ中旬、私は明日の仕事のために早めにベッドで休もうとした所で、一本
の電話がかかってきた。

『都ちゃんのこと、俺本気で振り向かせたい』

「……も、守屋君」

『この間のことは忘れてほしい……って、それは虫が良すぎるだろうけど、自分の考え改めたよ』

 電話の主の守屋君の声は重く、彼の後ろで雨がシトシト降る音が聞こえてきた。



< 230 / 459 >

この作品をシェア

pagetop