学園スパイラル~七不思議編~
「そんな風には見えないが」

「あ~。他の家庭と一緒にしちゃだめだよ。匠んち、おかしいから」

 言って健はケタケタと笑う。

 こいつを見ていればそれは解るが──耕平はある意味、失礼な思考をめぐらせていた。頭脳は遺伝とは関係が無いとは言うけれど、こいつはどういった暮らしをしているのだろうかと少しの興味が湧いてくる。

 それから、およそ三十分ほどが経過し、少女の霊は少しずつだが上達しているようだ。

「それじゃあ、一緒に弾こうか。ゆっくりいくから」

 匠は微笑んで再び鍵盤に指を乗せた。息を吸い込み、静かに吐き出すと同時に鍵盤が弾かれる。

 室内に響き渡るピアノの音色は今までとは違い、肖像画たちも泣く事はなかった。

 ぎこちない演奏だけれど、肖像画に取り憑いていた霊たちは満足したのか、全体が青白かった空間は徐々に本来の暗さに戻っていく。

 成仏したのか、残った薄明かりはピアノ椅子だけになった。
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