言い訳

 彼は、いつも私が一人残って仕事をしている時、一度帰しているのに夜食にサンドイッチを買って来てくれたり
「コーヒー入れますね」
と笑顔で労ってくれていた。

「じゃあ僕は帰ります。課長、無理しないでくださいね」
 そうだった。いつも気遣ってくれていた。





「もう帰れますか? 課長のマンション、だいたいの場所しか分からなくて」

「ええ、もう大丈夫よ。ごめんなさいね」

「いいえ」
彼は人気俳優のような優しい笑顔で
「でも、今夜は帰しませんから」

「えっ?」

 抱きしめられていた。
「ずっと課長に憧れてました」

「ちょっと待って……。冗談は止めて」

「僕の気持ちに気づいてくれてなかったんですか?」

「そんなこと言われても……」

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