俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
整った端正な面差しに、飄々としていて何事にも動じない藤堂とは大学時代に出会って意気投合した。

藤堂も俺と同じいわゆる“跡継ぎ息子”という立場だったせいもある。


祖父が興した会社を見事に盛り立てた父、その背中を見て俺は育った。

そのための勉強や修業は必要なものだと思っていたし、会社を守りたいとも願ってきた。


ただ、漠然と俺に務まるのか不安を感じる時は多々あった。

俺が後を継ぐのがこの会社にとって最良なのか、と迷う時さえあった。

そんな俺の葛藤をよそに父は期待を向けてくれていてその思いがつらい時期も正直あった。


藤堂は偶然にも俺と同じ葛藤を抱えていて、学生時代お互いの打ち明け話をしたのは今ではいい思い出だ。

同じ悩みや時間を共有した藤堂は俺の親友でありライバルでもある。


「でもまあ、如月の言い分も一理あるか」

一時間ほど前にここから不機嫌に退出した部下であり、友人について藤堂が口にする。


なぜか如月は詠菜をとても気にかけている。

わざわざ部下に言われなくても、俺が一番よくわかっている。


期間限定の結婚なんて最初から考えていない。

離婚なんてするわけがない。


すべては詠菜を俺だけのものにしたくて無理やりこじつけた条件だ。

詠菜を納得させるために離婚届を準備はしたが、署名以外は空欄だし詠菜の目に触れない場所に置いてある。


もうすぐこのプロジェクトもひと段落する。

そろそろ詠菜に本心を含めたすべてをきちんと告げたい。
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