俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
カッコ悪い?


「そんなわけ、ない」


あなたがカッコ悪いわけない。


伝えたい想いはたくさんあるのにうまく届けられない自分がもどかしい。


きちんと言わなくちゃ、私も本心をさらけ出さなくちゃ。


「いつもの、皆の憧れの副社長の采斗さんも、私に本音を伝えてくれる采斗さんもなにも変わらない。どっちも私の大好きな旦那様だもの。カッコ悪くてもなんでもいいの。一緒にいられたらそれだけでいい」


どうしたら伝わる?

あなたが好きだと、どんなあなたも愛しいのだと。

なにを言えばいいのだろう。


そっと彼の手を目の上から外す。

そこにあるのは驚きと困惑の入り混じった眼差し。


「采斗さんを心から愛してる」

その瞬間力いっぱい抱きしめられた。


「詠菜……!」

「素直に気持ちを打ち明けられなくてごめんなさい」

「詠菜が謝る必要はない。物事を複雑にしてしまったのは俺だ」


髪を撫でてくれる指先も背中にまわされた腕もすべてが愛しい。

大好きすぎて泣きたくなるなんて気持ちをこの人は私に初めて教えてくれた。


「これから先もずっと俺の妻でいて」


少し身体を離した彼が瞼に、鼻に、額にキスの雨を降らせる。

頷く私の唇をそっと自身の唇で塞ぐ。


甘く蕩けそうな声に私の身体が痺れる。
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