俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「采斗さんにひとつ内緒にしていたことがあるの」


それはずっと抱えていた私の大切な秘密。

私たちふたりに神様が授けてくれた奇跡。

ほんの少し身体を離して、夫の目を見つめて伝える。


「赤ちゃんを授かったみたい、なの」

「……え?」


二重の綺麗な目が大きく見開かれた。

私の髪を撫でる指の動きが止まると同時に微かに震えていた。


「子ども……?」

強張った表情を貼り付けたまま、尋ね返される。

「あの、まだ病院を受診はしていなくて……でも検査薬を……」


喜んでくれる?


心の中にほんの少しだけ巣くう不安。

こんな反応を示す夫を見るのは初めてでどうしてよいかわからない。


「本当に……?」

「采斗さん?」

私が夫の名を呼んだのと、胸の中に再び抱きすくめられたのはほぼ同時だった。


「嬉しすぎて、なんて言えばいいかわからない。本当にありがとう、詠菜。幸せすぎて現実とは思えない」

耳に響いた采斗さんの声が震えている。


「病院は俺と一緒に行こう。そうだ、今すぐ調べて予約を……! それよりも詠菜、身体は大丈夫なのか? どこかつらいとかはないのか?」

私の目を覗き込み、突然焦ったように問いかけてくる。


「え、あの……」

「妊娠しているのにこんな夜遅い時間にひとりで家を出るな! まさか走ったりしていないだろうな? これからは電車もダメだ、通勤途中になにかあったら大変だ。それより仕事は……」

一気にまくし立てられて今度は私が呆気に取られてしまう。
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