俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「采斗さん、落ち着いて。私は元気だし、なんともないから」

「でもお前になにかあったら」

「大丈夫。ずっと一緒にいるって約束したでしょう?」

「それでも心配なんだ。詠菜ひとりでも気になって仕方ないのに、妊娠を知った今はもうどうしていいかわからない」

至近距離から焦燥感のこもった目で見つめられて心臓が壊れそうなリズムを刻む。


「そばにいて、無事に産まれてくれるよう少しでも助けてくれたらそれでいいの」

「当たり前だろ。もうお前は家事もなにもするな」

「それはちょっと……」

「お前ひとりの身体じゃないんだ。頼むから無理はしないでくれ」

過保護すぎる発言に驚く。


喜んでくれるのも身体を気遣ってくれるのも有難いけれど、これは行き過ぎでは、と違った不安が芽生える。

普段の冷静な夫の姿とは真逆の様子に慌ててしまう。

悩んでいるとそっと彼が私の身体を抱き上げて自身の膝の上に乗せる。


「あ、采斗さん?」

「もうこれ以上、本当に離れたくないんだ。これから先はお前も赤ちゃんも俺にきちんと守らせて。ひとりでつらい思いをさせてごめん」

切ない目に射抜かれて呼吸が止まりそうになる。


ああ、この人は本当に私がいなくなるのを恐れてくれている。

離れたくないと思ってくれているんだ。


ずっと同じ思いを抱いていた私には夫の気持ちが痛いほど伝わってくる。

やっとお互いに想いが通じ合った気がした。


それを実感できた瞬間、心の奥が熱くなって涙が込み上げる。

お互いを知る時間が短い私たちだからこそ、正直に想いを言葉にして伝え合わなければいけなかったのに。

素直を気持ちをもっと早くに伝えていればよかったのに、私たちはずっと遠回りをしてしまっていた。


「詠菜の涙も想いもこれからは全部俺にぶつけて」

そう言って夫が溢れ出した私の涙を唇で拭う。

やっと本当の意味で私たちは夫婦になれた気がした。
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