堕天の翼

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「じゃ！ 送ってくれてありがとうー！
ね、家で珈琲でも飲んでく？」

と。。玄関前で、瑠樺は悠を自宅に誘っていた…

その、テンションの高さ…は、相変わらずだった…

瑠樺のカラ元気さに…、悠は深いため息をつき…

「いゃ、いいよ。今日は帰る
それよりさ…お前、やることがあからさますぎじゃない？」

と、悠のその言葉に…、瑠樺は一瞬にして…静かになり…

悠がなんについて話しているのか…、瑠樺には察しがついていた…

「だって…、瑞希ちゃんに、好きな人が出来れば…って…」

「それは…、周りやお前がお膳立てして…出来るモノじゃない。
お前だって、分かってるだろ？
俺や雅人を勧めても…彼女の気持ちが、そうならなけらば…なんでもない…
人の気持ちは、他人がどうこう言って…カンタンに動くモノじゃない…」

悠に、ごく当たり前のことを言われたが…瑠樺は、少し意気消沈したように肩を落とした…

「…分かってるょ…。でも…」

「…瑠樺…、アイツに関わるの…もぅ、止めろよ…
それに、俺…お前とどうこうなるつもりはないから」

そぅ、まっすぐ…に瑠樺の瞳を見つめて言った悠…

その言葉に、瑠樺の瞳に涙の粒が浮かぶ…

「…分かってる…！」


悠は、踵を返し。。元来た道を歩いて行く…


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駅までの道を歩いていた悠…

胸ポケットに入れて置いたスマホの着信音が響いた…

そのポケットから、スマホを取り出し…、そこに表示されている名前に…、心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃を受けた…


そこには…

【成宮 奈都子】…と、表示されてあった…


悠は、深いため息を1つつき…、その表示をスライドさせ…、耳元に持って行く…

「…はい…」

『 悠、すぐに来て…』

その、耳元に聴こえた…女の声に、目の前が崩れ去るような感覚がした…


悠は、それ以上の会話はせず…、その通話を切った…

きゅ…っと、両目を閉じ…再び、大きな息を吐いた…

その瞳を閉じた瞬間…、先日、瑞希が話していた小説の感想を楽しそうに話していたのを思い出されていた…

一瞬、胸元に微かな温もりが浮かんだ…

スマホを、再び…胸ポケットにしまい…、その道を再び歩き始める…



悠の脳裏に、数年前の記憶が甦る…

薄暗い…、カーテンを締め切った部屋の中…シーツにくるまっている…一糸まとわぬ女性の姿…

それをただ…見つめている…自分…


『 あなたは、一生…私のモノよ…』

そぅ…、涙を浮かべている自分の頬に、指先を這わせる…その人…


一生…、消し去っても消えない…

抹消してしまいたい……記憶……