堕天の翼
第3章 ‐秘 密‐
薄暗い…、カーテンを締切っている部屋…

微かな光が漏れ…、朝が来ていることを、ようやく…告げられているようだった…

が、自分の身体は、中々…身動きが取れない…

そぅだった…、一昨日、アレから…囚われていたのだった…と、言うことを思い出した…


2日前の金曜日…、瑞希や雅人たちと居酒屋に行き、その後…ここに来ていた…


ここは、どこ…なのだろうか?


瞼を開けた…、その視界の端に…自分のことを部屋の中ほどにあったソファに座り、こちらを眺めている人物がいたことに気がついた…

「目が覚めたか…」

と、無機質にも取れる声…

その声には、聞き覚えがあった…


その人物は、腰を上げ…こちらに向かってくる…

ベッドの頭部のヘリに縛られたままだった…自分の両手首を解いてくれた…

身体を起こした自分、縛られたままだった手首を交互に擦る…、何とか…縛られた跡は残ってはいないようだった…

その、目の前の人物は…、自分の頬や顎先に手を這わせ…それが、ごく当たり前のことのように…唇を重ねてきた…

「お前が…、他の人間に気持ちが向かないように見張ってることにするよ…」

その言葉に、微かに…その瞳が揺らめいた…

咄嗟に、顔を背けた…。。それは、微かな抵抗…

「…そんなこと…」

【あるはずがない】…と、言いかけた…寸でのところで…その身体をシーツの上に押し倒された…

その上に、覆いかぶさるように…その人物に見下ろされる…

「……っ!」

唇をまたもや塞がれ…、舌先が滑り込まれてきた…

瞬時に…、嫌悪感で悪寒が走る…

「お前は、逃げられるはずはない…」

「……」
《いつから…、

諦めることを覚えたのか…?


自分の人生に…、周りの人間に…、何も望まなくなったのか…?


ただ…、生命尽きることを…、願っているだけ…》


何も…、映さなくなった…その瞳に…

ただ、一つの光りとなるモノがあるとすれば…


その脳裏に、彼女の笑顔が思い浮かんでいた…


「……っ!」
《君のことを…、

好きになっている…

惹かれている…なんてことは、

赦されるはずがない……っ》



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「おはよう」

その聞き覚えのある声に、瑞希は振り返る…

その声に、一瞬、心臓が止まってしまうのではないか…というくらいの衝撃を受けていた…

「…あ。成宮くん、おはよう…」

一瞬にして…、耳元まで紅潮する…


GWが明けたばかり…の週初め…

悠に会うのは、先月の金曜日以来…だ…


瑞希は、悠の顔がマトモに見れなかった…。。

あの日、キスをした以来、会ってはいなかった…

GW中も、瑞希は課題やレポートで大学に行くことはあったが…、悠のことは見かけなかった。


あの言葉に傷つきながらも…、【会いたい】気持ちは、抑えられそうにない…


大学まで向かう…アパートから最寄り駅のホームでの待ち合わせ…

駅のホームから、電車に乗っている間…までの2人だけの時間…

「目、腫れてる…。何か、あった?」

と、いつものように…悠は、肩から下げた鞄から、小説を取り出す…

「…あ。別に…! 本、読みすぎて…夜更かし…」
《なに、言い訳してんだろ…?

ホントは、会えない時間も…、成宮くんのことを考えすぎていて…なんて、言えない…》

その、瑞希の言葉に…悠は、一瞬だけ…小説から視線を離し…瑞希の方を見…

「ふーん。そぅなんだ…気をつけないとね? すぐ、冷やさないと」

「…あ。うん」
《ヤダ…。

意識…し過ぎて…。顔、紅いかも…っ?

相変わらず…、綺麗な指先してる…

顎のラインも…、鎖骨も…。。

アレ…? 赤く内出血のアト…、前にもあった…》

瑞希が見つめる悠の胸元…、首筋にも、衣服で見え隠れはしているが…内出血のアトが幾つもあった…

「……っ」
《アレって、キスマーク…とか…?》


「あれー? 成宮ー!」

その声に、瑞希は、ビクっとなった…

悠は、その声がした方を振り返る…

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