堕天の翼
「瑞希…、名前、呼んで…」

そぅ、耳元に届いた悠の声に…、瑞希は悠の方に視線を向けた…

「…え…? 成宮くん…?」

「じゃなくて、下の…名前…っ」

「って…。。悠くん…?」
《って、かなり…恥ずかしいんだけどっ!》

その、瑞希の反応に…悠は、吹き出しそうになりながら…笑いをこらえている…

「ちょっと! 自分で言わせといて…っ」

「ウソ。可愛いすぎ…っ」

そぅ、笑いかける悠に…。。瑞希は、悠の頬に触れる…

「夢みたい…。もぅ…何処にも…行かないでね…っ」

その言葉と共に…、涙が溢れ…頬を伝い…枕元を濡らした…

その、瑞希の声に…悠の胸元が締め付けられた…。。もぅ、手放したくはない…と…

もぅ…、二度と……――


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「…ん…っ」

窓際のカーテンから漏れる光りで、うっすらと覚醒される…

すぐ、側で…自分の身体を抱き締めている…人の温もり…。。両目を開け…、瞬きを何度か…繰り返す…

「……っ!」
《…っわっ! ビックリした…

そっか、昨日…、成宮くん、ウチに泊まったんだった…》

目の前…、数cmの所…に、端正な顔立ちの悠が瑞希に腕枕をした体勢のまま…規則正しい寝息を立てていた…

すぐさま、半身を起こし…。。一糸まとわぬ姿に、昨夜のコトが現実だった…と、思い知らされた…

少しずつ…、現実味を帯びてきた…。。胸の高鳴りが収集がつかない程だ…

「……っ」
《私、昨夜…、成宮くんと…っ!》

と、昨夜、起こったことを思い出し…。。瑞希は、耳元まで紅潮し、その頬を両手で覆い隠す…


が、その次の瞬間…

自分のすぐ側で、笑いをこらえている…声が、耳元に届いた…

瑞希は、先程、まだ寝息を立てている…と、思っていた悠の方を見る…

「百面相みたぃ…」

懸命に、笑いをこらえている…その姿に…

「起きてたの?」

「ちょっと前にね? あんまり寝顔が可愛いかったから…。寝たフリしたら、どんな反応するかな?って…」

その、悪戯でもしたかのような笑顔に、瑞希は、何も言い返せない…

「もぅ…っ! 寝顔、見てるなんて最低…」

「自分も、見てたくせに…」

悠の言葉に、返す言葉も見当たらない…

悠は、瑞希の身体を背後から抱き締め…

「…夢じゃなくて、良かった…」

その、耳元に囁くように言った声に…、胸元が熱くなり、涙が溢れそうになる…

「…私も…っ」
《彼は…

あの図書室での一件から…3ヶ月。。

あのお姉さんと居たのだろう…


何があったのか…、話してもくれないし…

私も…、聞かない方がいい…よね? きっと。。


本当は、知りたいけど…

彼が、話したくないことは、話させたくない…っ》



その時…、けたたましく鳴り響く…インターフォンに。。2人は現実に引き戻された…

「誰…っ? こんな早く…」

一瞬にして…、みるみる…その表情が曇っていく悠…

「…まさか…っ」
《成宮くんのお姉さん…っ?

私の家なんて、知るはずもないのに…》

…が、そぅ思いながらも…、悠の姉の奈都子ならやりかねない…と、気持ちが暗くなった…

とりあえず、もし仮に…悠の姉だとしても・自分には関係のないことと…、言い張るつもりでいた…。。きゅ…っと、唇を噛み締め…

床に落ちた衣類を拾い…

「瑞希…っ」

悠の不安気な声…

「大丈夫。何とか…誤魔化すから…」

そぅ、無理して…笑って見せる…
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