堕天の翼
不安気な瑞希の表情に…、悠は、安心させようと笑いかける…

「…大丈夫…っ?」

不安そうな瑞希に、悠は笑いかけ…、頷き返した…

「瑞希のお父さんが…、使ってない部屋あるから…貸してくれるって…。
ヘタに保証人になろうとすると…ウチの親が黙ってはないだろう…って…
…ありがとう…」

それは…、瑞希が悠と悠の姉との関係を知るより前に…見せてくれていた笑顔…

それだけで…、瑞希の胸元は熱くなった…



2人が、その教室を出ていこうとした…

その時。。

瑞希と悠の目の前に、黒ずくめのスーツを身につけた2〜3人の男たちがいた…


「……っ!」

「成宮くん…っ!」

咄嗟に…、嫌な予感がした…

2人は、数歩…後ろに後ずさる…

「やはり…、瑞希ちゃんと一緒にいたのか…。少し…見張らせて貰ったょ…」

その、聞き覚えのある声に…、2人は、その声が聞こえた方を振り返る…

「…漆原…っ!」
《…【見張ってる】?

やはり、あの人の差し金か…

瑞希の父親に話をしに来ていただけなのに…っ》


あの姉のことだ…、人を雇ってでも…自分の居場所を探していたのだろう…

少しずつ…、崩れ落ちそうな感覚がした…

瑞希は、悠の服の袖を掴んでいる…

やはり…、あの人から逃れようとすること自体…、ムリなことなのか…?…と。。

「やっぱり、瑞希ちゃんと一緒にいるんだ〜! 瑠樺は、使えると思っていたのにな…
使えないな。あの女は…っ、甘いこと言えば…靡くと思ったのに」

と、独り言のように…、ほくそ笑みながら言った琢磨…

悠は、瑞希の身体の前に立ち塞がり…

「目的は、俺だろ? 行けば…いいんだよな?」

「成宮くん…、ダメ! また、お姉さんに…っ」

「その代わり! 彼女には何もするな…っ! …頼むから…っ」

少しずつ…、力なく…薄らいでいく声に…。。瑞希は、両の瞳から涙を零しながら…悠のシャツを掴み…

「ダメだよ…、言いなりになったら…せっかく、抜け出そうと…」

そぅ、涙声で…訴える瑞希…

悠は、瑞希の方を振り返り…、自分のシャツを掴んでいる…瑞希の手を一瞬握りしめ…、その手を解き離そうとする…

涙で濡れた頬に、触れ…瑞希に笑いかける…

「…ありがとう…」

そぅ…、耳に届いた声…

悠は、琢磨が手にしていた…白い布で口を塞がれ…。。力なく…その場に崩れ落ちた…

「…成宮くん…っ!」

床に倒れた悠の身体に、近づこうとした瑞希…

が、琢磨に腕を捕まれ…。。難なく引き離される…

数人の男たちが、床に倒れた悠の身体を抱き抱え…、廊下を歩いて行った…

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