堕天の翼
第6章 ‐信 実‐
「成宮くん…っ!」

追いかけようと…琢磨に掴まれた腕から逃れようと抗う瑞希…

「瑞希ちゃん、あのお姉さんには関わらない方が身のためだよ
あの人、ホントにヤバいし。君がかなうような相手じゃないし!
手を引いた方が身のため…」

そぅ、耳元に聞こえた声…。。琢磨は、そう告げるなり…、瑞希の手を離し…、瑞希はそのまま床に崩れ落ちていた…

琢磨は、悠を連れ去った…その男たちの後を歩いて行く…

「こんなの…、可笑しい…。人を何だと…、こんな異常なコト…。ひどすぎる…。」

泣き崩れる瑞希…

…が。。

彼を…、このまま…連れていかれるワケにはいかない…

瑞希は、手で溢れる涙を拭い…。。琢磨たちが歩いて行った廊下をかけて行く…


「……っ!」
《ダメ…、このまま…、連れていかれたら…

殺される…っ!


生命は、助かるかもしれないけど…

成宮くんの心が…、殺されちゃう…っ》


廊下を駆け足でかけて行く…、途中…誰かに名を呼ばれたようなきがしたが…。。それすら気づかなかった…

やっと…、追いついた時には、悠は、真っ黒な黒塗りの外車に乗せられた後だった…

「瑞希ちゃん、追いかけてきたの?」

と、その車を見送ろうとしていた琢磨に言われた…が、いまの瑞希には何も目に入らない…

瑞希の姿に、助手席にいた…奈都子が降り、掛けていたサングラスを外す…

「なぁに? どうしたの? そんなに息を切らして…。瑞希ちゃんって言ったかしら? 何をそんなに必死になってるの?」

瑞希は、冷ややかな笑みを浮かべる奈都子を睨みつけ…

「これって、拉致ですよね? 成宮くん、返してください!」

「あら…、それはどちらが…? 私は、弟を返して貰った…だけだけど。」

と、車の後部座席で意識を失っている悠を見、勝ち誇ったように笑みを浮かべる…

「薬で眠らせて…連れさるなんて…、誘拐です。普通じゃありません! 彼には、自分の思考も思いもあるのに…、あなたがやってることは、虐待と同じです」

その言葉に、奈都子は瑞希の目の前まで近づいてきた…

自分を睨みつけるように見つめる瑞希の頬に、平手打ちを食らわし…

「もっと、利口な子かと思ったゎ。もう二度と、悠に関わらないでね。
あの子はね、私のモノだから…永遠にね、一生よ…」

瑞希は、涙で濡れる頬のまま…、奈都子の両腕にしがみつき…

「お願いします。彼…、お姉さんとのこと、悩んでいて…
だから…」

「…【だから】
なに? 見ていたんじゃないの? 悠も同意して、私との関係を望んでいたのよ
邪魔しないで…っ!」

瑞希に掴まれている手を振り払った奈都子…

バランスを崩した瑞希に、奈都子はその肩先をドン!と押し倒した…

踵を返す…と、奈都子は、車に乗り込み…

「あの子が、どんなことをしているのか…知らない方がいいゎ…
これは、忠告よ。」


そのまま…、車は走り出して行ってしまった…

呆然…と、走っていく車を見ていることしか出来ない自分…。。涙で、目の前がよく見えない…

「あーあ…っ。女の子なのに、何やってるの?
服も泥だらけじゃん」

地面に尻もちをついた瑞希…。。見かねた琢磨は、手を差し出し…

「だから、あの人に関わるな…って、言ったじゃん。殴られちゃって…頬、赤いよ?」

と、呆れながら言った琢磨…

瑞希は、その手を払い除け…睨みつけながら…

「アンタなんて、嫌いっ! 友達だったんでしょ?
何で…、彼があんなメにあってるのに…あんな人の…っ」
《言いなりになんて…っ!》

そぅ、言い放った…瑞希に、琢磨は差し出していた手を引っ込め…

冷ややかな瞳を向ける…

「…友達ね…。そんな、モノ、なんの役にたつの? 世の中、力のある方についた方が…後々、ラクってことあるでしょ?
瑞希ちゃんも、少しは学んだ方がいいよ…」

琢磨のその言葉に、瑞希は自分の耳を疑った…

琢磨の方に視線を向ける…

「でも…、あの人に文句言う…なんて…。面白いね? 瑞希ちゃんって…。興味深いよ…
まぁ…、あのお嬢さまには響かないと思うけど」

そぅ、ニッコリと笑顔を見せた琢磨は、腰を上げた…


少し、離れた距離から…、瑞希の、名を呼ぶ…瑠樺の声が聞こえた…こちらに駆けてくる…

「と。瑠樺だ…。
めんどくさいから、退散するね!」

と、軽く手を振り…、その場を逃げるようにかけて行く…

「瑞希ちゃんっ! さっき、廊下ですれ違った時、話し掛けたのに…。
て。さっき、琢磨がいたような…?」

瑞希に追いつくなひ…、先程、チラッと見えていたはずの琢磨らしき人影がいなくなったことから、瑠樺は辺りをキョロキョロも見回した…

瑞希は、涙でボロボロな顔を瑠樺に向ける…、頬も赤く腫れ始めていた…

「ちょっと!! どうしたの? ほっぺ、赤いー!」

瑠樺は、瑞希の視線に合わせ、腰を降ろし…涙で濡れている頬を持っていたハンドタオルで拭く…

瑞希は、瑠樺が現れ…、安心したのか…またもや涙が吹きこぼれていた…

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