堕天の翼
第8章 ‐断 罪‐
瑞希は、その日の夜…22時を回った後…、病院に来ていた…

瑠樺からの連絡を受け…、夜の救急受付で病室を聞き、そこへと向かっていた

「あっ! 瑞希ちゃん!」

瑞希の姿を見つけるなり…、廊下の椅子に座っていた瑠樺は、すぐさま立ち上がる…

瑠樺の隣りには、雅人もおり…。。琢磨の両親らしき人たちもいた…

「瑠樺ちゃん、漆原さん…刺されたって…」

瑠樺は、両の瞳かは涙をボロボロとこぼしながら…、瑞希の問いかけに頷き返した…

「もぅ、なんで…刺されたって、何やってるの? もぅっ!」

言葉とは裏腹…な瑠樺の態度…

「鷺森さん、琢磨…、多分…成宮の姉さんか成宮に刺された…と、思う…」

瑞希が到着するまで…瑠樺をなだめていたらしい雅人の言葉…。。その言葉に、瑞希は、両目を見開く…

「…え…?」

「救急車、呼んだの…男の声だったって…。救急隊員が駆けつけた時には、誰もいなかったって…
その現場は、成宮の姉さんのマンションだし…。2人のうち、どちらかが…っ
俺、さっき…通報したか?って聞かれたから…」

「…っそんなことっ! 成宮くんが漆原さんを刺すなんて…っ」

「でもっ! アイツら、何かあって…衝突していたのは俺も瑠樺も知ってるよっ!」

そぅ、急に声を荒らげた雅人に、瑞希も口をつぐむ…。。

「あ、ごめん。成宮が刺したと、決まったワケじゃないのに…。
漆原の意識が戻れば…、何か分かるんだろうけど…」

雅人は、そぅ言いながら…琢磨が眠り続けている病室の方に視線を向けた…

「……っ」
《成宮くんが、漆原さんを刺すようなこと…っ!

そんなことっ!

あるはずない…っ。きっと、何かの間違い…

何か…あったんだ…


あのマンションには、成宮くんも…奈都子さんもいない…

手がかりだと思っていた…その部屋から、何処に行ったの…?

もう少し…と。思ったところ…で、手の間から、すり抜けていく…》

瑞希は、手に持っていたスマホを見つめる…

先ほど、琢磨と自宅アパート前で話をした…

その直後…、琢磨の携帯に電話を掛けたのだった…。。奈都子との会話の音声データを手に入れる為に…

そのスマホをぎゅっと握りしめ…、瞼をぎゅ…っと閉じた…

「……」
《成宮くん、何処にいるの? 無事でいるの…?

ただ…、それだけが知りたいのに…っ!》

と、祈るような気持ちでいた…


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


緊急オペから、数時間たち…琢磨が意識を取り戻した…。。琢磨の両親は、一命を取り留めた琢磨に安堵した…

意識を取り戻した…直後から、警察の取り調べが病室で行われた…取り調べは、2人の刑事が来ていた…

マンションの保証人となっていた…奈都子の元婚約者だと言う男性医師も警察の事情聴取を受けている…と言う…

「…刺したのは…、成宮 奈都子です。
弟で、友人の成宮 悠を拉致監禁をしていたので…友人を連れ出そう…とした時に…
あのマンションは、奈都子の元婚約者の男のモノです。あそこで…成宮は…奈都子とその婚約者に関係を強要されてた…
それだけじゃなく…」

琢磨の言葉に、30代くらいの男性刑事は…一瞬、言葉を失った…

「それは、売春を強要されていた…ということ? その彼が…?」

「はい。」

「何故、その2人の姿が見えないの? 何か、覚えていることは…?
何故、君が…その刺されることになったのか…」

「あの2人は、一緒にいると…。
僕も…、成宮の拉致監禁に協力していたので…」

そぅ…、少し無表情に近い…淡々とした言い方をした…。。麻酔が切れたばかり…で、嘘や誤魔化しを口に出来る状態ではない…

「…拉致監禁…っ? 実の弟を…? 売春を強要って…」

急に、声を荒らげた…その刑事…、その男を静止するよう促した…40代中盤くらいの刑事…

「また、伺わせて貰うよ…」

と、パイプ椅子から腰を上げた男性刑事…、2人は琢磨に頭を下げ…病室を出ていく…


1人…、その病室に残った琢磨…

先ほどまで…、腰を刺され…苦痛に歪んでいた自分を思い出す…一瞬、死を覚悟した…






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