もういいかい?
夜景のキレイな駅前通りを抜けて

幼稚園から少し離れたファミレスに来た。

ここは前にアルバイトで、唯ちゃんと食べた所だ。

いつも海晴先生と行く居酒屋の方が、随分近いのに……

あそこは先生以外の人と行きたくなかった。

自分で思ってる以上に好きなんだなぁ。

斜め前でウニのクリームパスタを頬張る咲を見ながら

ここにいない彼女の事が浮かぶ。

「で、唯先生に頼まれたんだ?」

はぁ??

脈絡のない会話に戸惑っていたら

「私を嫌ってる航が、わざわざ誘うのってそれしかないでしょう?
唯先生、ずっと私の事気にしてたから。」

コイツは生意気で気も強いけど

何処か危なっかしくて、海晴先生に似てると思う。

唯ちゃんがウサギやハムスターのような小動物だとしたら

海晴先生や咲は………

キツネやネコだと思う。

童話でも悪者になることがあるけど

本物はスゴく可愛い。

でも、すんなりなついてくれそうになくて

素直に可愛いと言われない。

ホントは、他の動物と変わらず甘えたいはずなんだけど………。

「別に嫌ってる訳じゃない。
同期が二人で、男と女だから
どう接したらいいのか戸惑ってるだけ。」

「でも、唯先生に頼まれた事は否定しないんだ。」

「あぁ………別にそんな事は………。」

「悠人先生の彼女だって分かっても、急には諦められない?」

「………………………そんな事ないし。
第一、好きな人は唯ちゃんじゃないから…………。」

「もう、ムリしちゃって!」

「嫌、ホントだから。
変な事言って誤解されると困る。」

「えっ!ホントなの??
噂されて困るってことは、幼稚園の先生??」

肯定も否定もしないでいたら……

「………分かった。
その人が大事ってことだね。
ありがとう。
嫌われてるって思ってたから、そんな大切な事を話してくれて嬉しい。
上手くいくといいね。」と。

思ったよりも良い奴??

唯ちゃんに頼まれての時間だったけど………

誘って良かったと思う。
< 21 / 121 >

この作品をシェア

pagetop