許せない青空

 それから一週間……。
 特別体調も悪くないし普通に仕事をしていた。退職の件は言い出せないままで……。

 そんな時、病院から電話があった。大切なお話があるので、至急来院して欲しいと。



 三日後……。私は有給を取って病院に向かった。

 大切な話って何だろう? 新しいガン治療薬が開発されたから実験台にでもしようって? だから大学病院は嫌いだ。研究材料にされるのか? 手術だって医学部の学生に上から見下ろされる。裸で内臓までさらして患者はモルモット……。

 いいわよ。今後の医学界の発展の為? ガンなんて簡単に治療出来る未来の為? 実験台にでも、さらし首にでも何にでもなってやるわよ。

 どうせ死ぬのだから。死んだらこの体は朽ち果てる。死体は朽ち果てても私の心までは誰にも触らせない。



 病院の受付に着いて
「すみません。芹澤麻琴ですけど」

 受付の女性が「あっ、はい。芹澤麻琴さん。すぐご案内します。ちょっと後、お願いね」そう同僚に言い残すと「どうぞ。こちらです」と促された。



 いつもの診察室を通り過ぎてエレベーターに乗って案内されたのは相談室?

「こちらで少しお待ちください。すぐ先生が来られますので」

 診察室とは少し違う。机と椅子が二つ。でも医療器具はなさそう。机の上のシャーカステンが、やたら目立つ。折りたたみ椅子がいくつか。お付き添いの親族用? 他の患者さんに聞かれてはマズイ話をするための部屋?

 もういいのに……。実験台にでも、さらし首にでも何にでもなってやる覚悟は出来てる。
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