監禁生活5年目
監禁されています



なに……………あれ…………


今までこんなことは一度もなかった。


あいつは大きいダンボール箱を床に置いた。



「おいしょ。………じゃぁここに置いておくからね。」


「え………あのっ!これは?………」


訳がわからない。

中には何が入っているの?

「…それは自由に使っていいからね。」

そう言うとあいつは出ていった。


『ガチャン』

鍵を閉める音が部屋に響いた。


「………使っていいって言われても…」

私は恐る恐るダンボール箱に近づいた。


そしてゆっくりあける。

最初はよく解らなかった。

けど

「ミミちゃんだっっ!!」

お母さんがくれたウサギのぬいぐるみが入っていた。

「ミミちゃんっ!久しぶりっ!」

ぎゅっと抱き締める。

「…あ……………でも…」

新品なんだろう。私が持っていたミミちゃんより少し硬い。
生地かしっかりしている。


「じゃぁミミちゃんじゃないか…ん~。名前どうしよう。……………………………」

ジーっとウサギを見つめる。

「ミミちゃんの妹にしようかな?だからえっと…ま、み、む……ムムちゃん?変かなぁ…」


考えながらお腹をモフモフした。

「ん~。い、き、し、ち、に、ひ、み、り…!リリちゃんにしよう!」

もう一度ぎゅっと抱き締めた。

「これからよろしくね!リリちゃん!!」

リリちゃんを離したらまたダンボールに目をやった。


「…まだ入ってる?」

のぞきこんだ。

「………すごい……」


中には色々入っていた。


ファッション雑誌、服、マンガ、ゲーム機、それからお菓子にノートと文房具。


「すごい!すごい!マンガやゲーム機もある!!」

興奮していた。

お母さんと暮らしていたときはこんな高いもの買えなかった。


「わぁ………すごい…」


服もキレイでかわいいものもいっぱいだった。


「…これ、ホントに使っていいのかな?…」


マンガを読みたくなった。

ゲームもやりたくなった。

可愛い服も来たくなった。

服の組み合わせがわからないのでファッション雑誌も読みたくなった。


すごい。今までずっと退屈してきた5年間が一気に変わった。


「…どうしようかな……………」

最初はマンガを読むことにした。


友達がいつもマンガの話で盛り上がっていて羨ましかった。


マンガは全部で5冊。


早速1冊目を読み始めた。

「…………………………………………」


「…………………………………………」

「…………ふふっ………」








面白かった。

主人公の女の子が色々な冒険をするお話。

花畑でお昼寝をしていたらいつの間にか小人の村に来ていたり、船に乗っていたら船から落ちてしまったり、けれど海のなかで人魚と遊んだり。


本当に面白かった。

「…次はどんなお話かな?じゃぁ…これにしようかな!……………」


一ページ目を見てやっぱりやめた。


「…今日全部読んじゃったら明日読む分無くなっちゃうかな…」


せっかくここに来て初めてできた楽しみ。


それを今日だけなんて嫌だ。


「…………明日読もう…」

時計をみる。

「!結構読んでたんだな………もうこんな時間…」

色々やりたかったが明日にしようと決めた。


「…ご飯食べよう…………」




そしていつもと同じようにご飯を食べ、ベッドの上に戻り、時間が来たら眠りに入った。


「…お休み…リリちゃん…」

リリちゃんがいるだけで布団が暖かく感じた。




ー次の日ー



「…おはよう。」


「……………おはようございます…」


いつものようにあいつが来た。


「ご飯ここに置いておくからね…」

「…はい。」


「……気に入った?」


「へ?…」

「漫画とか。服とかも着てみた?」

「…いや、まだ………」

「そう、たぶんサイズはあっていると思うから…ミミちゃんもあるし、ゲーム機もあるし…まぁ好きにしていいからね…」



そう言ってあいつは出ていった。


『ガチャン』

「………………………………」

部屋がまた静かになった。



「……マンガ読もう…」


昨日途中でやめたやつを手に取った。


今回のやつはサスペンス。


事件が起きて刑事が犯人を捕まえるお話。

ドキドキしてワクワクして面白かった。


「…………………………………あ…」


この子…………誘拐されたんだ…


1つの事件で誘拐された女の子を助けると言うお話だった。


「…………頑張って…」

女の子は今にも泣きそうな顔をしていた。

女の子は誘拐犯に叩かれたり紐で手を縛られたりしていた。

「…………………早く助けてあげて…」

本当にかわいそうだった。

「………………………………………」

「…………あ!」

やっと刑事が来て女の子を助けてくれた。

「…良かったぁ…」


ホッとする。


誘拐犯はお金目当てだったみたい。


「助かって良かった………」








あれ?

待って?




誘拐って…きっとこの人みたいにお金がなくて誘拐したり…なんかの目的があって誘拐するんだよね?


もう一度読み返す。


女の子は叩かれたり蹴られたりしている。


私はこんなことは一度もなかった。


むしろ、ゲームや服なんか与えられた。


「………あいつはなんの目的で私を誘拐したの?」


お金?

それならこんなに長く監禁しないだろう。


それに私の家にはそんなにお金はない。
お母さんと私がなんとか暮らしていけてる。
それもお母さんが頑張って働いてくれているから。


「…………………………お母さん…」


怖いよ。

不安だよ。



「…お母さん……………」






『…ねぇお母さん?』

『なに花菜?』


『お母さんはなんで私に"花菜"って言う名前をつけたの?』


『…それはね、お母さんの大好きなお花があってその花と同じようにキレイに育ってほしいからだよ。』


『へ~。そうなんだ!』

『そう。だからいつも花菜は元気で明るくいてね。お母さんの大好きな大好きな花菜でいてね』

『お母さんも私の大好きなお母さんでいてね』

『うん!』







「…おはよう」


「…お早うございます。」



「ここにご飯置いておくからね…」

そう言ってあいつは出ていった。


『ガチャン…』


部屋がまた静かになった。


「お母さん……」

またお母さんの夢を見た。


「私…………元気だよ…ずっとずっと元気だよ!だから………………………お母さんも元気でいてね…」


大好きなお母さん。




頑張ってここから出るからね。







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