犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
いつの間にかこんなにも好きになって、曖昧な関係がズルズルと続いてしまってたけど、大切な同期という気持ちはひとつも変わらない。
「ありがとね。浅香」
私が右隣に向けてお礼を言うと、「なんの礼?」と不思議そうに首を傾げている。
もう知ってるんだから、そんな演技しなくていいのに。
と思いながらも、私は苦笑いを浮かべた。
それから、午前中の間、浅香はすごく忙しそうに色々な人に声をかけて引き継ぎをしている様子だった。
これから浅香が抜けたらこのチームも忙しくなるのに、そんな軽い引き継ぎでいいの?なんて思うほど内容は薄そうだったけど。
私もサポートに入っていた別のチームの春の限定コスメが完成して仕事に一段落がついた。
そして、もう少しで恋愛にも一段落つく。
私ももう次のステップに進む準備をしないと。浅香が勇気を出して福岡に行くように。