彼の溺愛はわかりづらい。
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夏休み初日の俺は、学校に行かなきゃいけないくせに、柄にもなく浮かれていた。
原因は、言わずもがな渋川に会えるからである。
正直なところ実行委員は面倒くさいけど、長期休暇で渋川に会えないことに落ち込んで、珍しく夏休みが憂鬱だった俺にとって、休み中ほぼ毎日渋川に会えるのは、願ってもないことだった。
休みが始まったというのに、早起きして制服を着て、暑いだろうからってアイスまで用意しちゃってる俺を、今から働きに行く両親が不思議そうに見てる。
「燈、どうしたの?今日から夏休みなのに」
「体育祭の実行委員になってさ。夏休み中も学校行って作業しなきゃならねぇんだ」
「…その割には、随分とご機嫌ね」
…さすが母さん。鋭いな。
「母親のカン」ってやつ?
「…もしかして、例の『渋川琴さん』と一緒とか?」
「ぶっ…それ、なんで知ってんだよ」
突然言われたことに驚いて、俺は飲んでいた麦茶を吹き出した。
…まぁ、「なんで」も何も、アイツしかいねぇだろうけど。
「はーくんが言ってたのよ~。「燈に好きな子いる」って。私、うっかり名前まで問い詰めちゃった☆」
いや、それ絶対「うっかり」じゃねぇよな。確信犯だよな、うん。
しかも、もう一つ言わせてもらうと、いい年して語尾に星マークとかつけてんじゃねぇよ、母さん。