秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

その刃を振り上げた瞬間、あちこちから悲鳴や叫び声が飛び交った。



『きゃあぁぁっ!アゼリア様ぁぁっ!』

『騎士様、お許しください、騎士様っ!』

アゼリア様の傍にいた見習い仲間たちは、斬られる恐怖で泣き叫びながら、アゼリア様にしがみついていた。

それを庇うように、仲間の子を腕に抱き留めるアゼリア様。刃を向けられても凛として、怯える素振りすら見せずにいた。

成り行きを黙って見守っていた観衆もまずいと思ったのか、辺りは騒々しくバタバタと動き出す。



アルフォード様の翳した刃は振り下ろされることはなかった。

この異常な事態を察して、誰かが呼んできたのか、現れた警備兵らによって、アルフォード様はあっという間に取り押さえられたのだった。

武器を取り上げられ、複数人に取り押さえられたアルフォード様はそれでも抵抗し、獣のように、吠えていた。



公子ともあろう者が、婦女に対して剣を抜く。

そんなとんでもない事件が起こり、学園内は騒然とした。もちろん、学園祭などこの時点で中止だ。



私は……ひとつひとつの出来事があまりにも衝撃的で、ショックで。その場に立ち尽くし、その光景を茫然と見ているしか出来なかった。

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