秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
もし、ローズマリー令嬢への懸想があの赤い虫によってもたらされたというものなら、それは彼らの意志そのものではない可能性がある。
王太子様や令息らには婚約者がいた。ローズマリー令嬢に対して隠れた下心が仮にあったとしても、自分の立場を考えずに、自分の婚約者や女子生徒をわざわざ激しく糾弾するだろうか。
例え、ローズマリー令嬢を盲目的に愛してしまったとしても、貴族教育を受けた者が、ましてや高位貴族らが、醜聞を恐れずに感情的で頭の悪い立ち回りをするだろうか。
私が知る『貴族』は、そんな生き物ではない。
中にはそんな愚かな御方もいるのだろうけど……今回の場合は皆が揃っての行動だ。奇行を繰り返すなど、通常じゃ考えられないわけであって。
だとしたら、導かれる結論は……こうだ。
あの赤い風、虫は、人の心を操ることができるもの。
操って、彼らの意志を……奪うもの。
ローズマリー令嬢に対する盲目的な愛の囁きも、傍を離れなかったことも、女子生徒を糾弾し断罪したことも。
王太子様が、アゼリア様に敵意を持ち、婚約破棄をちらつかせたのも。
アルフォード様が、丸腰の女性相手に抜剣したのも……。
どれも、彼らの意志、本意ではない。