秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


……私は言葉を詰まらせた。

何故ならば、話に聞いた通りの流れではない。神託の儀を済ませた聖女の姐さまらから聞いていた話とは、ちょっと違うからだ。

本来は、四大元素【火・水・風・地】のどの属性が強いかを告げられ、何を願って祈るのかや、聖力を以て何をすべきなのか、命を与えられる。

なのに、私の場合は四大元素の属性は告げられず……。



「私を……【秘匿されし聖女】と、精霊王様は仰いました」



ーー【秘匿されし聖女】とは。

その名の通り、力の詳細を世間に秘匿しなければならない、それほどの特異な聖力を持つ聖女のこと。

文献では『邪悪に立ち向かう聖力』『邪悪を滅ぼす聖力』と伝えられている。

……本来、聖女は神託にて、自然界の四大要素の加護を受けた聖力を、祈りを捧げるために授かるものだ。

聖女の祈りは、天候の恵みをもたらし大地の豊穣を満たす。生まれ持った聖力で傷ついた人々を癒したり、聖力を発することによって魔獣からの脅威から国を護る役割を担う。

国の平和を祈り、安寧を保つのが聖女の役目ではある。

……だが、『例外』の神託を授かるものもいて、それが【秘匿されし聖女】である。
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