秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

何?何故?何で?

何故、彼女ーーローズマリー令嬢が、この神殿の儀式の間にいるの?

私らが中から扉を開けるまで、誰も中に入ってこれないはずなのに、どうやって入って……入り口に待機していた姐さまや、ファビオらは?!

いるはずのない人物がいることに、何故こんなことになっているのかもわからない。混乱が混乱を呼ぶ。



狼狽える私と、そんな私を護るように腕の中に収め、目の前に突然出現した彼女を睨みつける。大聖女様。

そんな私らを見て、ローズマリー令嬢は「うふふ」と笑う。

彼女の背後には、あの赤い星ーー赤いてんとう虫が大量発生したかのように、辺りを埋め尽くして飛び交う。

これは……彼女の【邪気】。



「……ねぇ、もう一度聞いてもいい?」



ローズマリー令嬢はそう言って、大量の赤いてんとう虫を侍らせながら、一歩ずつ、私たちに近付いてくる。

幾多の男性を虜にした、あの無邪気な笑みを浮かべながら。




「【秘匿されし聖女】って、何?」







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