秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
第十三章 花の都のダメ男(アルフォード視点)
○○○






意識はいつも、ふわふわと心地よい綿毛の中にいるような気分でーー。



『アル、貴方はお兄さんになる必要はないの。比べることはない、貴方は貴方なんだから』



ーー耳障りの良い言葉を、君はくれる。

優秀な兄と、この変に美麗な見目に劣等感を抱いていた自分を肯定した言葉をくれるのだ。



『私は、そのままのアルの方が好きよ?』



薔薇のような甘い甘い香りに包まれると、心地良くて。



『……アルのこと、大好きよ?』

『……愛してるわ?』



君を……何度も、何度も欲するのだ。

笑顔、言葉、香り、そして……肌の温もり。

何度も何度も求めては、その心地良さに浸る。



どうしてこんなに愛おしいんだ。ずっと、ずっと傍にいたくなる。

ローズ、愛してるよ。君は俺の女神だ。



『時間は戻らない、儚いものです』



君を、愛して……。



『起こってしまったことを悔やむのか、これからを見据えて励むのか。どちらがいいか』



……いや、違う?

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