秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

「……」

それは、そういうことなのか……。

でも、『ようやく目が覚めた』その言葉がとても腑に落ちるぐらい、久々に意識がすっきりとしているのは否めない。

今までは意識に薄い膜が張られていたような感覚で、それが綺麗さっぱり無くなったのだ。何だか、清々しくはある。

の、だが……。



(魅了……)



頭の中は、清々しいとは言えないぐらいの大混惑だ。

自分が【魅了】?

父の言う【魅了】があったとして、それはいつ?いつから毒されていた?

いったい誰が、何のために?

こちらとしては、意識が操られていたにも関わらず、記憶はしっかりと残っているのだ。

自分が王都の学園にいた際、何をしていたのか、何を思っていたのかーーどんな罪深き所業に出ていたのか。

乱心していたと言わざるを得ない程の所業。

だが、あの時はそれが正しいと信じて疑わなかった。

……今は、何故あのようなことをしたのか、理解に苦しむ。



しかし、そこで。数ヶ月前のことははっきり覚えていても、近々の記憶が途切れていることに気付いた。

(……あれ?)

そして、率直な疑問も生じる。

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