秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
結局、エリシオンの勧め通りに、湯浴みとまではいかないが簡単に体を洗った。
アゼリアが王都内のタウンハウスに連絡して手配してくれたのか、着替えもちゃんと用意してあった。
貴族の義務とやらで身だしなみを整えてから、軽食をつまんでエリシオンと応接室にて二人きり、話を始める。
「アゼリアは凄いな……」
先程のやり取りを思い出すと、そんなセリフがポロッと出てくる。
大いに同意するかの如く、エリシオンも深く頷いた。
「ああ。俺たちがローズに懸想して罵詈雑言、敵意を見せたにも関わらず、この状況を異常と察して密かに動いてくれていたんだ。他の奴らの婚約者の令嬢にも情報を共有して、この場は静観して堪えるよう声をかけてくれたのもアゼリアだ。……アゼリアには一生、頭が上がらないぞ……」
深くため息をついて項垂れる、我が国の王太子殿下。
言葉の通り、これはもう一生尻に敷かれるであろう。
「そこまで?……他の奴らは大丈夫だったのか?」
この『大丈夫』は、身体そのものだけではなく、身辺をも案じた意味もある。
俺には幸い婚約者は居なかったが……他の奴らには、家門同士の契約、繋がりともいえる婚約者がいたのだ。
なのに、他の令息に病的に懸想するなど、婚約者だけにではなく、相手の家も自家をも裏切る行為である。