秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
彼らは【魅了】で、自らの意思を奪われている。
それはわかっているのだけど、大の男たちが寄って集って一人の女性を、ましてやこの国の重要人物である大聖女様に危害を加えようなど……許されるはずがない。
それを私利私欲で差し向けるローズマリー令嬢も、許されない。
私の呼び掛けに応じることのない、操られた男性らがゾロゾロとこちらに近付いてきて、今度は私と背後の大聖女様をズラリと取り囲んだ。
「女神の敵を討ち取る……女神の邪魔はさせない……!」
目の前にいる貴族令息と思われる男性が、そんな譫言を呟きながら、私の背後の大聖女様に向かって手を伸ばす。
「やめて!来ないで!」
二人の間に割って入ると、令息が私に向かって「……邪魔だ!」と顔を顰めて、手を挙げられた。
「きゃっ!」
「ラヴィ!」
右頬を中心に、痛みと衝撃が走る。男性は私の顔をおもいっきり平手打ちをしたようで、勢いで後方に少し吹っ飛ばされてしまった。
平手打ちの衝撃で頭がチカチカする中、動揺してしまった。
女性相手に何の躊躇いもなく、暴力を奮うだなんて。