秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
そんな元々の評価もあり、侯爵令嬢には敵が多かった。
敵が多いというよりは……皆、関わりを避けて距離を取る。賢い者なら。
それに、王太子とその側近らを侍らすというこんな事態になってしまっては、特に令嬢らは胸に秘めていた侯爵令嬢への嫌悪を隠せなくなってくるのであって。
『どうして、私に冷たくするのですか?無視するのですか?傷ついたわ、私……』
と、ほんの少しの嫌悪を敏感に感じ取った侯爵令嬢が一言呟き、涙を流せば、それが重罪だと彼らは騒ぎ立てる。
『彼女を悲しませるなんて、嫉妬で彼女に嫌がらせをするだなんて、なんて卑劣な!』と。
いやいや、大袈裟な。そっちがよろしくないでしょ?……と、反論する余地は与えられない。相手は王太子と筆頭貴族らの令息だ。
『彼女に危害を加えた者』として目を付けられた者は、即座に断罪され泣きを見るしかなかった。
苦手だと思う者への、ほんの少しの嫌悪を感じ取る。傷ついた、ただそれだけで倍返し以上の仕打ちをする。
彼女の何気ない一言に、振り回されては行動に出る愚かな男たち。
このままでは、学園の秩序が崩壊する。
この緊急異常事態に立ち上がったのは……王太子エリシオンの婚約者、アゼリア・ガーネット公爵令嬢だった。