イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
声を荒げてしまった私を、彼女は不快そうに眉を顰めて睨む。
私はすっかり頭に血が上っていて、それ以上言い返す言葉が思いつかないけれど引き下がるのは嫌だった。

深呼吸をして気持ちを落ち着けると、まっすぐに彼女を睨み返す。
この人、さっきからすごく失礼だと思う。

言葉遣いは丁寧でも、口調や目つきから私を馬鹿にしているのは伝わってくる。
会ったばかりの相手に見せる態度じゃない。私を郁人の結婚相手だと知る前からもなんとなく見下されているのはわかったし、きっと普段からこういう態度なのだろう。

暫くにらみ合ったあと、彼女の方がふっと口元を歪めて笑った。
あ、また何か嫌な言葉が飛んでくる、と察知して身構えた。

「そう。じゃあ、今日私に会えて良かったわね」

意味がわからず、眉間に力を入れて尋ねるような視線を向ける。
彼女はまったく悪びれない、綺麗な笑顔で言った。

「何も知らないで準備もないまま、別れを切り出されたら困るでしょう?」
「……っ、そんなことにはなりません。郁人はそんな人じゃ」
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