イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「まあ、佐々木さん、あの容姿ですしね。過去の女くらい掃いて捨てるほどいるでしょ」

河内さんの中ではどうやら元カノ説が出来上がっているらしい。
そうではない、と訂正したいけれど、じゃあなんなんだと言われると困るのでそのままになってしまった。

「それにしても新婚の時くらい、ちょっとは仕事の手を抜いたらいいのに」
「……それは絶対無いと思う」
「ふたり揃って、そうでしょうね」
「あ、でも。今日は、夜に久々に外で食べる約束で」

どこに行くかはまだ決まってないけど……郁人は何が食べたいだろう。

つい、そわそわと壁の上部にある時計に目を向ける。今外出中の彼は、多分定時頃には会社に戻ってくるはずだけれど。
落ち着きのない私に、河内さんはにやりと笑って「ごちそうさま」と言った。


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