イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「ちょっと抜け出してきただけなんだ。どうしても、歩実に会って話したくて」
「うん」
「俺はしばらく、身動きが取れなくなる。けど、歩実と別れるつもりはないから待っててくれ」
「戻ってきたら、自由になれる?」
「いや。眞島の後を継ぐことにした。ただ、常盤との結婚がなくても事業に支障が出ないようにすることと、歩実のことを叔父夫婦に認めさせてくるのに少し時間がかかる」
ベッドに座ったまま、彼の顔を見上げた。
「認めてくれるのかな」
「……策は練ってある」
「それがダメだったら?」
「……駆け落ちでもするか」
至極真面目な顔をして郁人が言ったので、私はつい笑ってしまった。
「信じてくれるか?」
彼の目が、私の答えを待っている。
……うん。
大丈夫……郁人は私を忘れたりしない、ちゃんと迎えに来てくれる。
少しの間、目を閉じて考えた後、私はしっかりと頷いた。
「わかった。待ってる」
郁人の頬に、両手を添えてもう一度。
「大丈夫、ちゃんと待ってます」
郁人の帰りを、ちゃんと待っている。目を見て伝えた途端、彼の手に両腕を掴まれる。
そのまま、深く唇が重なった。