イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 約束の時間、一分前だ。すっぽかすわけにはいかないのだから覚悟を決めてパウダールームを出た。


 真直ぐカフェラウンジへと歩く。すぐに、相手は見つかった。彼もまた、私とは正反対の意味でお見合いにはそぐわないカジュアルな服装でテーブル席に座っていた。
向こうも私に気が付いて目を合わせたまま立ち上がる。


 明るいベージュのボトムに濃いグレーのVネックのニットにシルバーのネックレス。ラフなのになぜか緩すぎるイメージはない。まるで雑誌から出てきたモデルのように、コーディネートがぴたりと彼に嵌っているからだろうか。
 黒髪はサイドは短くすっきりとカットされており、長めの前髪は斜めに横に流し、切れ長の綺麗な目が隠されることなく真直ぐに私を見つめていた。


 怖いくらいに整った目鼻立ちだ。正直隣に並ぶなんて、冗談じゃない。それでも逃げ出すわけにもいかず、私は彼の目の前まで歩み寄った。
 
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