恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
「私はどちらでもいいよ?律紀くんがいいなって言う話し方で大丈夫だから。」
「………そう、ですか?よかった。やはり教えてもらうだけではダメですね。」
「教えてもらう?」
「………あ。」
教えてもらうというのは、夢と契約恋人になった時に教えたものだろうか?そんな風に思ったけれど、言葉については教えてないな、と夢は思ったのだ。それに敬語禁止にしたのは、律紀の方だ。
恋愛下手だと言っていたのに、慣れているなと思ったのもこれがあったからだった。
夢が指摘をすると、失敗を隠しきれない表情を見せた。夢はよく意味がわからなかったけれど、律紀を黙って見つめていた。
すると、「はぁー………夢さんに隠し事は出来ませんね。」と、律紀は少し残念そうに苦笑した。
「………笑わないでくださいね?」
「うん。笑わないよ。」
「………実は、夢さんを見つけて初めて会いに行く前から、理央先輩にはいろいろと女の人についてとか、ファッションについて教えてもらっていたんです。」
「え………そうだったの?」
律紀はご飯を食べていた箸を止めて、頭をかきながら正直に話しを始めた。
「カッコ悪いんですけど。」と言いながらも恋人である夢に全て話してしまう辺りが夢は「かわいいな。」何て思ってしまう。
もちろん、彼に内緒だけれど。
「会いに行った時の服は全部理央先輩に見立てて貰いましたし、車もどうでもいい中古車を買ったんですけど、それもダメだと言われて買い換えました。」
「えぇ………そこまで?」
「はい。やるなら徹底的にやれと言われて。夢さんに嫌われたらどうするんだって………。髪も結べるぐらいに長かったですし、眼鏡も黒ぶちのもので、似合ってなかったみたいで………。徹底的に変えたら生徒たちに笑われましたけどね。髪は自分で切ったら、理央先輩に怒られました。」
それを聞いて、髪がボサボサだったのは自分で切ったからなのかと、夢は妙に納得してしまった。
けれど、夢に会うためにそんなにいろんな事を準備していたとは知らなかった。