俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
「ごめんね。別に下心があったわけじゃないんだよ。純粋にお礼をしようかと思ったんだ。あっ、牧野さん。アポイントがあってもう出ないといけないので、その書類に不備があれば携帯に連絡ください」
渡会さんはニコッと笑って、牧野さんにそう伝えている。
『不備があれば』なんて言い残したものの、不備なんてあったことがない。
「わかりました」
話が逸れて助かった。
でも、せっかく誘ってもらえたのに、彼氏がいるなんて余計な――しかも間違った情報が伝わってしまった。
まあ、仕事のお礼に誘われただけだとわかってはいるけれど。
「すみません。よろしくお願いします」
丁寧に牧野さんにお礼を言った渡会さんは、なぜか私に視線を合わせて軽く口角を上げたあと、ジャケットを羽織りながら出ていった。
完璧男の微笑み、見ちゃった。
「渡会さん、今日も素敵」
「あの、さりげない笑顔が爽やかよね。先輩なのに偉ぶらないし、私たちにも丁寧な言い方をしてくれるし」