俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
それから二十分。
営業に出る準備が整い、コーヒーカップを給湯室に片付けに行くと、三人の女子社員が話をしていた。
さっき直井さんに叱られたから今度はここでしゃべってるんだ。
この三人は普段から私語が多すぎるので、直井さんの意見に賛成だけど、彼女のように注意する勇気がない。
私は自分の意見を主張するのがちょっと苦手なのだ。
「あっ、高遠さん。今日も一段と素敵ね。できる女のオーラが出てるわ」
私を褒めちぎるのは、同期入社の坂巻(さかまき)さん。
ふさふさのまつげは多分エクステ。
腰のあたりまである長い髪をいつもくるくるに巻いていて、牧野さんの下で営業事務を担当している。
私とは違うかわいらしいタイプでなかなかモテる彼女は、彼氏の話もあっけらかんとするので、皆今はフリーだと知っている。
そんな彼女が私を褒めるときは大体裏がある。
「そんなことは……。カップを片付けていい?」
場所を空けてくれた坂巻さんに小さく会釈をしたあとインサートカップを捨ててホルダーを定位置に戻すと、再び話しかけられた。