俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
私は慌ててバッグに荷物を詰め込み、彼に続いた。
そして、エレベーターの中ですぐに話しかける。


「渡会さん、私……お財布に余裕がなくて」
 

かっこ悪いけどとても飲みに行く余裕はない。
帰って冷蔵庫の中にあるもので簡単に夕食を済ませる予定だったし。
 
情けなくて小声で伝えると、彼は一瞬目を大きくしたもののすぐに表情を緩めている。


「俺が誘ったんだから心配するな。それに、今日は高遠のお祝いだろ?」
 

おごってくれるってこと?


「お祝いって、売れたのはたった一本ですよ」
「でも俺はうれしかったけどな。たとえ一本でも、高遠が笑顔になれる仕事なんだから」
 

彼はそう言いながら、なぜか私をじっと見つめる。
 
その視線が艶っぽいのは気のせいだろうか。


「あ、ありがとうございます」
 

こんなにくるくると表情を変える人なんだ。
仕事中よりリラックスしているからなのかな?
 
ありがたくお言葉に甘えることにした私は、渡会さんが大通りでつかまえたタクシーに乗った。
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