恋を忘れたバレンタイン
 バレンタインデーなんかに振り回されたみたいで情けない……

 すべてバレンタインデーが悪い。
 チョコなんか……

 この歳になって、バレンタインデーに当たり散らす自分も情けない……


 嫌、本当は自分でも分かっている。
 本気で、向き合ってくれようとした彼から逃げた自分が情ない事を……


 でも、今更自分を変えるなんて出来ない……


 どうにもならないくらい、涙が出て止まらない。


 自分で、決めた事なのだからと何度も言い聞かせた。

 バレンタインデーなんて、たいして重要な日ではないのだから……




 次の日、彼の姿を見かける事は無かった。

 ちらっと、噂に聞いたのは、しばらく海外出張らしい。
 新しい企画チームの為の研修との事だ。

 いつ戻ってくるかまでは分からなかった。


 私にとっても、彼にとってもいい冷却期間かもしれない。


 いつものように仕事に集中していれば、知らないうちに薄れていくだろうと思っていた。

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