復習したい
「あ、でももう高額な契約取れそうな大手はもう殆ど当たってるんだけど....」
営業で回った先を頭の中で思い出し、高額の取引が出来そうな先を考えたが殆ど当たったことがある上に、契約が取れなかった所だった。
「勝手に国内に絞んなって」
え?
顔を上げて男を見ると、呆れたような顔をしていた。
「国内だけに絞んなってまさか...」
「海外の方が一億円も無理な額じゃないだろ?」
「いや、まあ確かにそうだけど...!」
うちは国内ですらロボット業界では危うい立ち位置なのに、ましてや海外進出なんてもっての他だ。家電製品などは海外に幅広く輸出しているが、ロボットでの世界進出はまだ遠い先の事だ。
そもそも国内から海外進出を果たし成功したロボット企業は、国内最大手のロボットメーカー達しかない。
「うちの技術なら海外だってきっと相手にできる。ただし俺一人は無理だけどな」
それをこの男は、まだ国内でもまともにやっていけていない、海外の話は一切出ていないこの会社で、初めて海外進出をしようとしているのか。
ただ男の目は強い意志で輝いている。
その目で私を見て
「お前の協力が必要だ。....のるか?」
と言った。
.....そんなの文句こそは言ったが最初っから決まってる。
「拒否権なんかないんでしょ?」
私の言葉を了承として取ったのか、ふっと笑ってから、また後でなと手を振って男は去っていった。
乗っかってしまった船。沈没寸前の船だけど、男は無謀な事を言うけど、失礼極まりないけど、何故かそのビジョンは理論的で、しっかりしていて、頼れると思った。
どうせ辞める羽目になるなら、最後にあの憎たらしい美少年に賭けてみようと思った。
「....それにしてもタメ口って。どんだけ失礼なのよ。それとも同期なのかしら...。」
あんな同期居たっけなと、私は頭で入社式を思い出し、同期の顔を一人一人思い出しながら自分の部署へと戻っていった。