海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 私がため息と共に愚痴をこぼせば、父ちゃんが背中越しに私を振り返った。
「母さんはエレンのことが大事だから、心配しているんだよ。風呂のことは、……うん、そうだな。エレンかわいさに、ついついこの年まで誘われるまま一緒に入ってしまった父ちゃんも悪かった。一緒に入るのは今日で最後にしよう」
「えー? なんでだよ?」
 私は思いっきり眉間に皺を寄せ、唇を尖らせた。
 そんな私の頭を、優しい目をした父ちゃんが、諭すようにポンポンとなでた。
「そろそろエレンも年頃で、立派なレディの仲間入りだからな。ここいらで、ひとつの区切りをつけよう。なーに、一緒に風呂に入らなくたって、今まで通り内緒話もすれば、冒険ごっこも付き合う。な? 父さんとエレンの関係は、なにも変わらないだろう?」
 ……どうやら冒険ごっこには、付き合ってくれるらしい。
 一瞬、それもまた立派なレディの行動としては相応しくないような気がした。とはいえ、自分から父ちゃんとの冒険ごっこをフイにする気はさらさらないから、そっと口をつぐんだ。
「……父ちゃん、それ、約束だぞ?」
「ああ、父さんはエレンに嘘はつかない」
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