愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
「確かにそうだけど……高校生活最後の夏休みだよ?楽しまないなんて、もったいないとは思わない?」

仲の良い友達も吉野も受験生だし、そんな余裕はないと思う。

吉野とはたまにメールや電話で少し近況を報告し合う程度で、なんの約束もしていない。

「楽しむって言ってもなぁ……。別に行きたいところもないし」

「彼女と海とかプールとか、花火大会とか行かないの?可愛い彼女の水着姿とか浴衣姿とか、興味あるでしょ?」

英梨さんはいたずらっぽい目で俺を見ながら尋ねた。

これくらいの歳の男は女体のことばかり考えているとでも思っているんだろうか。

相変わらず俺は吉野の体に触れたいとか裸を見たいとは思わないし、ひと夏の経験じみたことをしたいとも思わない。

それに吉野は周りから可愛いと言われているらしいけど、整った顔立ちをしているとか、男受けしそうな顔だと思いはしても、心の底から可愛いと思ったことは一度もなかった。

「別に興味ないなぁ……。暑いしどこに行っても混んでるだろうし、あんまり行きたいとは思わないけど」

あまりにも若さに欠ける俺の言葉に納得がいかないのか、英梨さんは少し呆れ気味だ。

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