愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
そのあと山崎さんに英梨さんが辞めた理由を尋ねたけれど、山崎さんはしばらく休業していて英梨さんとは入れ違いで職場に復帰したので、詳しくは知らないと言っていた。

英梨さんと直接話したくても、俺は英梨さんの住んでいる場所も、連絡先すらも知らない。

どうして俺には何も言ってくれなかったんだろう?

俺のことをあんなに好きだと言っていたのに、なぜ黙って俺の前から姿を消してしまったんだろう?

どんなに考えても答が出るわけもなく、俺は英梨さんを失った喪失感と虚無感に苛まれる日々を送った。



英梨さんがいなくなって2週間近くが経ち、10月に入った。

その日は教職員の都合で授業が昼までで終わり、お腹を空かせて家に帰ると、休暇を終えた土田さんがうちのキッチンで食事の準備をしていた。

「おかえりなさい、潤さん。長いことお休みいただいてすみませんでした」

「あっ、土田さん……お久しぶりです。もう娘さんの具合はいいんですか?」

「ええ、おかげさまで。毎日子育て頑張ってますよ」

「それは良かったです」

授業が昼までだったので昼食がまだだと言うと、土田さんは手早く食事の用意をしてくれた。

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