愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
二人の嬉しそうな笑顔を見ると俺も嬉しくて、もっといろんな料理をうまく作って食べさせてやりたいと思った。

味をしめた俺は、翌日には初心者向けの料理本と必要な食材を買い、慣れないながらもキッチンに立って料理に挑戦した。

本に載っている写真のようにうまくはいかなかったけど、玲司も志岐も喜んで残さず食べてくれたから、それだけですさんでいた心があたたかいものでゆっくりと満たされていくのを感じた。

そして俺は今まで好きだと言ってくれた相手を思って、自分から何かをしたことがなかったと気付いた。

英梨さんを悦ばせようと思ったのだって、自分が愛されたいと思ったからだ。

俺は愛されたいという自分の欲求を満たすために、英梨さんの体に快楽を与えることしか考えなかったし、英梨さんが何を求めていたのかなんて知ろうともしなかった。

結局、すべては俺の自己満足だったということだ。

そんなことよりもっと心の奥の深いところで繋がれる誰かを、いつかは見つけられるといいなと思った。



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