愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
そして新入社員の歓迎会の日、上司や先輩に勧められた酒を断れず飲みすぎて具合が悪くなった俺は、過去に酔ったところを介抱するふりをして近付く女性社員に狙われた経験から、できるだけ人目につかない場所にいた。

少し吐き気がおさまったら帰ろうと思ってうずくまっていると、誰かが俺の背中を優しくさすった。

その手はどう考えても女性のものなのに、気分が悪くなるどころか、気持ちいいとさえ思えた。

一体誰なんだろうと振り返ると、そこには心配そうな顔で俺の背中をさする志織がいた。

「三島先輩、大丈夫ですか?お水もらってきましょうか?」

新入社員への洗礼とでも言わんばかりにあれだけ飲まされていたのに、志織は顔色ひとつ変えずけろっとしている。

そして俺の体を支えて近くにあったイスに座らせ、店員から水をもらって来てくれた。

志織はしばらくの間、心配そうな顔をしてそばにいて背中をさすったり、肩を貸したりしてくれた。

いつもなら女性に触られると具合が悪くなるはずなのに、志織に触れられると胸がドキドキして、だけどとても心地よくて、ずっとこうしていて欲しいと思った。

それは酒に酔ったせいなんかではなく、俺は間違いなく志織に恋をしているのだと確信した瞬間だった。



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