というわけで、結婚してください!
 



「駅まで急いでください」
と助手席で言った数志は、

「数志ーっ」
と後ろから首を絞められていた。

 征は後部座席で、なにやら、ぎゃあぎゃあ呪いの言葉を発している。

 ドアを開ける前に車を出してやったので、出られなかったようだ。

 尊様なら、飛び降りそうだけどな……と数志は思う。

 仕事のことを考えて、そこで無茶できないのが、この人のいいところで――

 尊様に出遅れてしまうところなんだろうな、と思っていた。

「鈴様にいつお会いになってたんです?」

 そう問うと、ん? と征は絞めていた手を止め、こちらを見る。

「鈴様に会うのは、これで五度目と聞こえましたが。
 私も初耳でした」
と言ってみたのだが。

「……いつでもいいだろう」
と征は背もたれに背を預け、腕を組むと、窓の外を見た。
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