というわけで、結婚してください!
 拗ねたな……と思いながら、
「そういえば、この結婚話、誰かが持ってきたんだと思ってたんですが。
 もしかして、征様がご自分で進められてたんですか?」
と訊いてみる。

 何処かで鈴を見初めて、自分から支倉家に話を持っていったのかと思ったのだ。

 だが、征は目を閉じ、言ってくる。

「話が来たのはたまたまだ。
 それに、……鈴は俺のことを綺麗さっぱり! 覚えていなかったっ」

 まあ、そういう人ですよねーと数志は思っていた。

 あの支倉家の狸っぽい生き物。

 外見は、父親と被るが、中身は、娘、鈴と被る。

 あのペットと同じ感じに、見るからに、ぼんやり生きてそうだもんな、鈴様。

 普通、征様みたいな男を見たら、若い娘なら、覚えてそうなもんだが……。

 そこで覚えてないのが、鈴様なんだろうな、と思っていると、目を開けた征は、窓から通りを眺めながら言ってくる。
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